Q | 敷地内駐車場を入居当初から使用している居住者が、既得権による永続的使用を主張している。 「法的根拠」はあるのでしょうか。外部の駐車場を利用している居住者もできれば交代して公平に使用できる方法はありますか。 (敷地内駐車場34台、住戸数66戸)なお、敷地内駐車場(4台)は最初から特定の居住者が専用していますが、抽選制等で他の居住者にも公平に使用できる方法はありますか。 なお、駐車場料金は近隣と同じ9,000円です。 駐車場の条件があまりにも異なるので、公平性を図るため 入れ替制度を考えたい。 |
A |
まず、契約上の状況とこれまでの経過を把握しましょう。 現在の規約等(関連細則及び駐車場使用契約書等を含む)の内容及びこれまでの変更履歴等、並びにマンションの分譲契約書の内容を確認して下さい。 次いで、実際の駐車場の使用に関する経過について調査します。 以下各ケースについて説明します。
1)分譲契約書、規約等に優先的な使用についての特段の記載がない場合(特段の根拠なく慣行的に優先使用)
優先使用に関し分譲契約や規約上の根拠があるとは言えません(法的な根拠もない)。 従って、この場合、駐車場の運営に関する規約等の規定を整備する事で対応可能と考えます。 なお、規約の変更が一部の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすときはその区分所有者の承諾が必要(区分所有法第31条1項)ですが、本件の場合、分譲契約書や規約等に優先的な使用権が承認されているわけではないので特別の影響を受ける区分所有者は存在せず、従って同意取り付けは不要ではないかと考えられます。 但し、これまでの経緯及び現状をどう認識するかですが、全く無視はできないだろうと考えます。 従って駐車場の扱い及び規約等の変更に当たってその根拠等については十分な理解を得るなど合意形成の努力が必要です。 また、現在、優先的に使用している区分所有者数が区分所有者総数の半数以上の場合、規約及び細則の変更が総会で承認されない可能性があります。 この場合は話し合いによる解決を進めることになります。状況によってはマンション管理士など第三者の支援を求めこれまでの経緯を踏まえた実際的な解決を探ることになるでしょう。 2)分譲契約書に優先的使用(専用使用権を含む)を認めている場合 この場合、これまでの判例からみると
①優先的使用権がマンション分譲時に有償で取得した場合(駐車場専用使用権の分譲のケース)
この場合は優先使用権の解消は容易ではないようです。 使用権取得時の支払金額を使用料の前払とした判例があります。 前払い期間が経過後は社会通念上相当額の使用料徴収は可能ですが専用使用権の無償による消滅は非常に難しいようです。 今後の裁判例の動向に注意しましょう。詳しくは弁護士に相談して下さい。 ②前項で優先使用権が無償で取得の場合 優先使用権を有する区分所有者が事業遂行上駐車場が必要不可欠で専用使用権の消滅により「特別の影響」をうける場合、消滅について同意を得ることは難しいと考えます。 ただし、使用料については社会通念上相当額の徴収を認めた判例があります。 3)規約に優先使用権を規定している場合 規約の変更により優先使用権の解消は可能ですが優先使用権を有する者の「特別の影響」がある場合はその者の同意が必要です。 従って、優先使用権を有する者の使用状況を把握して「特別の影響」の有無について検討する必要があります。 4)実際的な解決策について 以上原則的な対応策を説明しましたが、実際に解決を図る場合、以下の点に留意して下さい。
①この問題の解決は、取り組む方法・手順等によってはマンション内のコミュニテイを壊しかねません。
十分な準備、公正で慎重な手順、現実に不利益を受ける区分所有者に対する配慮等円満な合意形成を目指して下さい。
②その他検討事項 ○ 不足分の駐車場対策として増設又は、近隣駐車場の一括借り上げ ○ 駐車場使用料金の適正化(近隣駐車場を基準に見直す) ○ 実情に沿った公平な使用方法の検討 ○ 駐車場専用使用権の譲渡規制 ○ マンション分譲時に分譲された駐車場専用使用権の買い取り ○ マンション管理士などの支援を求め公正な解決を目指す |