マンション管理 Q&A(第二版)

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21 野良猫の餌付けをやめさせるには!

野良猫に勝手に餌をやる人がいて困っています。 その人は賃借人ですが、一人で30匹程度の猫に餌をやっているようです。 オーナーを通じて注意をしてきたが、やめる気配がありません。何か良い対策はありませんか。

猫の餌付けによるトラブルについての裁判では、「餌付けの禁止」と「迷惑料として近所への慰謝料200万円」(東京地裁立川支部判決)という判決がありました。

本件の相談については、区分所有法及び標準管理規約の面から考えてみたいと思います。

1)区分所有法6条1項に「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定められ、そして、同法3項に、「第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下占有者)に準用する」と規定されています。 占有者というのは、賃借人をさしていますので、この規定は当然に賃借人にも適用されることになります。

2)次に、餌付け行為がマンションの共同の利益に反する行為か否か、についての判断です。 最近の裁判事例では、前出の裁判のように敷地内で餌付け行為をし、そのために野良猫が徘徊して「鳴き声や糞等の悪臭、ごみ荒し」が生じている事実が証明できれば「餌付け行為が共同の利益に反する行為に該当する」と考えられるようになってきました。 そして、義務違反者に対する措置として管理組合は必要な措置をとることができることが定めてられております。(管理規約第66条) この義務違反には、単に建物だけではなく、敷地や付属施設の管理又は使用に関するものを含むと解され、そして、共同の利益には、共同財産の物理的維持・保全の観点からの利益のみならず、広く共同生活秩序の維持の観点からの利益も含むと解されております。

ところで、野良猫に餌付けをする本人は「かわいそうだから」「動物愛護を主張して」のつもりかもしりませんが、糞尿の始末までは考えないでしょう。 それが放任されると受忍の限度を超える事態に発展することになります。

したがって、早いうちに対策を立てることが大事です。 動物の愛護ということもありますが多くの人が住むマンションにおいては、共同の利益の方が優先されてしかるべきといえるのではないでしようか。

管理規約に迷惑行為を禁止する条項があり再三の注意、警告も受け入れられなかった場合で、受忍の限度を超えているような状況では、管理組合としては、総会の決議を得た上で訴訟の提起に持っていくよりないようにも思われます。

ただし、判決にも示されているように、共同違反行為に当たるかどうかは、程度の問題であり、慎重な判断を要求されております。

ここは直ちに違反行為だとするのではなく、諸般の事情も考慮しながら、社会通念に照らして慎重な対応をされたらよいと思います。

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