マンション管理 Q&A(第二版)

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20 避難ハシゴの点検を拒否する居住者への対応は?

バルコニーに設置されている避難ハシゴについて、消防点検をしたいのですが、特定の居住者が居室への立ち入りを拒否しています。 理事会としてどのように対応すればよいでしょうか。

「防火管理」とは「火災の発生を防止する」こと、及び「万一火災が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるため、必要な対策を立て、実行する」ことをといい、防火管理の原則は、「自らの生命、身体、財産は自ら守る」ことです。 (東京消防庁マンションの消防計画作成のポイントより)

避難設備に関する具体的な基準が消防法施行令16条に規定されていいて、一定規模以上のマンションについて、①点検の時期、②内容、③点検資格者等、④避難設備器具(避難はしご)等が定められています。

避難はしごを点検するためには、専有部分への立ち入りが必要です。(区分所有法第6条2項)

専有部分への管理上の立ち入りについて、区分所有法では6条2項では「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するために必要な範囲内において、他の区分所有の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる」とあります。 さらに、標準管理規約23条1項では「管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立ち入りを請求することができる。」とし、1項において、「前項により立ち入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」とし、3項において「正当な理由なく立ち入りを拒否したものは、その結果生じた損害を賠償しなければならない。」と規定してあります。

なお、規約にこのような定めがあっても実際に専有部分への立ち入りを拒否された場合、管理組合といえども強制的に立ち入ることは困難です。

居住者が点検を拒否する理由は、居室を人に見せたくないというのが真意だと思いますが、これだけではプライバシーの侵害ともなり得ず、正当な理由とも言えないので、まずは居住者の都合に合わせて立ち入らせてもらうように説得することです。 それでも拒否される場合は、避難はしごを使用するのは緊急時であること、災害発生時に避難はしごが不具合で機能不全状態にあった場合は、自分だけでなく同一階の居住者が避難できなくなる可能性もあること、被害が拡大した場合には不法行為になる可能性があり、損害賠償保険の対象にならないこと。 また、直接損害賠償の請求を受けたり、保険会社から保険会社が支払った損害賠償金の請求を受ける可能性があることなどを説明して、立ち入らせてもらうのが良いでしょう。 そして、立ち入らせてもらう場合は、立ち入る居室の整頓などを準備するために、立ち入る日時や場所を具体的に話し合い、書面で伝えることも必要でしょう。 管理組合としては、区分所有者と点検者のみに任せるのではなく、役員が立ち会う等の配慮も必要でしょう。

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