マンション管理 Q&A(第二版)

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13 滞納者が自己破産した!管理組合は何をしたらよいか!

自己破産した滞納者に対する対応について教えてください。

破産とは借金等を返済することができなくなった場合に、自分の全財産をお金に換えて、各債権者に債権額に応じて分配する裁判上の手続きです。 この場合分配した後もまだ多額の借金等が残った場合、個人の場合には、破産手続き後も生活をしていかねばならず、残った借金等を免除し、生活を立て直せるようにすることが必要であり、これが免責という制度です。

破産の申し立ては債権者からもできますが、債務者自ら申し立てることがほとんどです。 申し立てを受けた裁判所は、債務超過や支払不能の破産原因があると認めれば破産手続開始決定を出します(これを破産管財事件と言います)。 それと同時にマンション等の不動産を所有している場合には破産管財人を選任してその財産を売却して届出債権者に配当していくのが普通ですが、破産者に財産がない場合、裁判所は破産管財人を選任しないで、破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止します(これを同時廃止事件と言います)。

不動産等を所有している場合でも、抵当権が設定されていて当該担保権の被担保債権の残額が不動産処分予定価格の1.5倍を超えるときは、資産として評価されずに、同時廃止事件に分類されます。 この同時廃止事件の場合には、配当する財産がありませんので、配当手続は省略されます。

これらの破産手続が完了した後、裁判所は、個人については、免責不許可事由があるかどうか検討して、問題がなければ免責許可決定を出します。 これにより破産者は税金等の一部の債権を除いて支払義務を免れます。
  1. 管理組合の対応ですが、先ず破産管財人が選任された破産管財事件の場合です。破産手続決定開始前に発生した管理費等の支払請求ですが、破産債権届出を出し、破産管財人からの配当を待つことになりますが、その配当率は極めて低く(通常0%~10%)ほとんど期待できません。ただ破産債権届出は管理費等支払請求権の時効を中断させる効果があるので、債権届出を出しておくべきです。破産手続決定開始後に発生した管理費等の支払請求については、管理組合は破産管財人に対して、支払時期が到来するごとに通常の方法で請求すればよいことになります。ただし、破産財団に財源がないため破産管財人が当該マンションを換価するため売却した場合には、マンションの買主(特定承継人)が現れますので、それ以降は買主に請求できます。
  2. 次に破産管財人が選任されない同時廃止事件の場合ですが、破産手続は行われないため、破産手続開始決定前に発生した滞納管理費等も、破産債権として届出を出すことなく、破産者に対して個別に請求できますが、破産者が免責許可決定を受けると請求できなくなります。これに対して破産手続開始決定後に発生する管理費等は免責の対象になりませんので、破産者に請求できることになります。もっとも滞納者が任意に支払わなければ打つ手はありません。この場合は、当該マンションに抵当権を有する金融機関が競売の申し立てをして落札者(特定承継人)が現れるのを待つしかありません。そして滞納者のマンションが競売にかけられた場合は、管理組合は競売情報の入手に努め、配当要求書を提出し、配当がなかつたり不足する場合は買受人(競落人)たる特定承継人に対して請求を行います。

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