Q | 私が理事長をしているマンションには、数名の管理費など滞納者がいます。 今度の理事会で、滞納者の名前を掲示して督促することを決議したので、滞納者に対して事前にこのことを伝えたところ、滞納者の一人から、「掲示したら名誉毀損で訴えてやる。」といわれました。 この場合、名誉毀損になるのでしょうか? |
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「掲示したら名誉毀損で訴えてやる」との発言は、刑事告訴と民事損害賠償をする趣旨のいずれかと考えられます。
まず、刑事告訴の場合、公然事実を掲示して人の名誉を毀損した場合は、名誉毀損罪が成立することになりますが、公共的必要があり、掲示した事実が真実であると証明された場合は処罰されないことになっています。
この公共的必要とは、国家や社会全体に関するものだけでなく、小規模の集団に関するものでもよく、滞納している事実が真実であれば、名誉毀損罪が成立しないといえるでしょう。 次に、民事損害賠償の場合、プライバシーの侵害が問題となります。 管理費の徴収はマンション管理の重要な課題ですし、管理費の滞納を放置しますと管理業務にも影響し、また多数の遅滞なく管理費を納めているほかの組合員にも影響します。 滞納者に各種の督促手続を行い、これらの督促にも関わらず支払わなかった場合、一般的にはプライバシーの侵害にはならないともいえますが、プライバシーの関係、家族に子供がいる場合の配慮、管理組合へのリアクションの問題もあり、名簿の掲示はあまりなされていないのが実態です。 いずれにしても、氏名を公表する場合には、督促文言や掲載場所にも慎重な対応と配慮が必要です。 判例としては、東京地方裁判所の裁判例(平成11年12月24日)があります。 これはA市にある別荘地を管理している町会において管理費の支払いを怠った者に対して、立看板に氏名を掲載したところ、氏名を記載された者が名誉毀損にあたるとして慰謝料を求めた事件です。 裁判所は、
もっとも、上記裁判例は「経緯・文言・内容」等を考慮していることから明らかなように、滞納者の氏名を掲示することがどんな場合でも名誉毀損とならないと言っているわけではないことに注意する必要があります。 滞納者の氏名を公表することが、管理費の回収に効果的な手段といえるのか、下記事項を勘案して検討する必要があります。
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