マンション管理 Q&A(第二版)

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1 総会を開催しないで書面で決議できますか?

総会を開催しないで書面決議の方法を取りたいのですが、どのような場合に、どんな手続で行えばよいのでしょうか?

書面決議については、区分所有法第45条第1項と第2項に定めがあります。 第1項には「この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは書面決議をすることができる。」とあり、第2項には「この法律又は規約により集会において決議をすべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面による合意があったときは、書面決議があったものとみなす。」とあります。

第1項は、先ず第1段階として書面決議の方法をとることについて承諾をとります。 これは区分所有者全員の賛成を得なければなりません。 一人でも反対があると書面決議はできません。 このことは本来多数決の前提である総会の場で意見を言い合って討論し、賛否により決議する会議の場を省くことになるので「討議の機会がなくなる」ことについての承諾を得るためのものです。 この承諾が得られた後に、第2段階として、改めて具体的な議案について書面で賛否を問うことになり、議案は過半数又は特別決議で決することになります。

第2項は、最初から具体的な議案について書面による決議を求め、その結果、議案について全員賛成であれば書面決議について全員の承諾が得られたものとして有効に決議が成立するとするやり方です。 これは、具体的な議案について書面で全員の賛成が得られれば、その意思表示の中には具体的な議案の賛成と合わせて、書面による決議を行うことの承諾が含まれていると評価して結果的に区分所有者全員から書面による決議方法をとることの承諾を得たことと同じと考えることによります。

では、実際にはどちらの対応をとればよいかとなりますと、後者は手続きが2回になる手間を省けるため一見便利に見えますが、「議案そのものに区分所有者全員賛成」という高いハードルがあります。 一人でも反対または棄権があれば、改めて総会を開催するか、前者の2段階方式をとることになり、基本的には当初から前者の2段階方式を選択した方がよいかと思われます。 この場合も2回に分けて意思確認を取るのでなく、
① 書面決議に付すことの賛否
② ①で全員合意があることを条件としての議案の賛否
を合わせて書面により投票してもらうよう手配することが良いと考えます。

但し、いずれにしても書面決議による方法は多数決の基礎・前提である実質的討議の機会を無くすことですから、議案の内容により区分所有者の賛否の予想や具体的な討議の要請などの諸事情を勘案し、容易に区分所有者全員の合意が得られるような場合に限られると考えるべきだと思います。
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